オオスナモグリと巣穴化石(2002年)
瑞浪市化石博物館友の会の機関誌に投稿したもので、愛知県田原市の渥美半島・高松の新生代4紀の地層で巣穴と共に保存された日本で唯一ののオオスナモグリの希少な化石について記載したものです。 化石のすべてを豊橋自然史博物館に寄贈しました。
スナモグリは名前のように内湾性の磯の砂泥地に穴を掘って、巣穴に中で生活しており、ザリガニとエビの中間の形態で、ヤドカリに近いものです。半透明で頭胸甲は円筒所で腹部は平です。 写真1のように第1胸脚は左右不相称で第1、2胸脚ははさみを持ち、脚は不完全なはさみに終わっています。ニホンスナモグリは大きい方の第14胸脚のはさみはスナモグリのものよりずっと大きく、 指の歯の形に異変があります。(写真2)
スナモグリの化石は各地で多く産出しますが、腹部は柔らかく全身の化石は残らないため、完全な形態のものはほとんど見つかりません。ノジュールに入ったものは比較的元の形態を残していますが、 圧縮されてツブレているのものが多いようです。は愛知県知多半島で採集したスナモグリの第1胸脚の化石です。(写真3)
新生代第4紀更新世の愛知県渥美群赤羽根町高松海岸渥美層群では、写真7-10のように巣穴に入ったままのスナモグリの化石が採集できます。渥美半島で採集した巣穴の化石でノジュール化しており、 中には原形を留めたスナモグリの化石が入っている場合があります。(写真4)
巣穴を作って生活するカニ類とエビ類では巣穴の形態は異なっており、管状で枝別れが少ないカニ類に比べてエビ類(エビ、シャコ、スナモグリ)は複雑に曲がりくねった枝別れした巣穴をもっています。 巣穴の通路である管状の部分にはスナモグリの化石はあまり無く、こぶ状の部分に多いようですが、生活形態や巣穴の構造から説明ができます。生存中または死骸が砂泥で急速に押し流され 、末端分で埋まり化石となったと推測できます(写真5)
高松海岸の渥美層で巣穴に入ったままのオオスナモグリの化石が産出するのは、地層の変動が緩やかな巣穴が破壊しにくい環境が現在まで維持されたからだと思われます。写真6はこのような化石を 採集した渥美半島高松海岸の地層であり、比較的柔らかい砂岩層の中にノージュール化巣穴のブロックが見つかります。(矢印の部分に多い)
ま と め
オオスナモグリと巣穴の関係を知り、巣穴が化石として残る環境を推定できた。今後も巣穴の形状と化石の形態などの調査を継続したいと思っている。
<写真1>スナモグリ
<写真3>知多半島のスナモグリの化石
<写真5>オオスナモグリの化石ノジュール
<写真7>オオスナモグリと巣穴化石化石1
<写真9>オオスナモグリと巣穴化石化石3
<写真2>日本スナモグリ
<写真4>スナモグリの巣穴化石
<写真6>渥美半島の採集地層
<写真8>オオスナモグリと巣穴化石化石2
<写真10>オオスナモグリと巣穴化石化石4
謝 辞
資料を提供して頂いた瑞浪市化石博物館の柄澤博士に厚く御礼申しあげます。
参 考 文 献
・地学団体研究会編(1989) 地団研究専報35
「現世および化石の巣穴」